頭痛はありふれた病気です。頭痛のほとんどは、辛いけれども命にはかかわらない「こわくない頭痛」ですが、一部には脳などの病気によっておきて命にかかわる「こわい頭痛」があります。これを区別するのはとても大事なことです。
頭痛めまい外来
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頭痛はありふれた病気です。頭痛のほとんどは、辛いけれども命にはかかわらない「こわくない頭痛」ですが、一部には脳などの病気によっておきて命にかかわる「こわい頭痛」があります。これを区別するのはとても大事なことです。
このような頭痛はもしかすると「こわい頭痛」かも知れません。早めの受診をお願いします。症状や身体所見、CT検査や血液検査を組み合わせて診断し、治療を提案させていただきます。もちろん頭部MRI検査や髄液検査などが必要と判断した場合には総合病院を紹介させて頂きます。よろしくお願いします。
脳の外側「くも膜下腔」に出血が起こった状態を言います。脳動脈瘤の破裂によって発症することが最も多いです。高血圧の人や飲酒・喫煙の習慣がある人、近親者にくも膜下出血の経験者がいる場合は特に要注意です。突然、頭が割れるような激しい頭痛が起きるのが特徴で、「バットで殴られたような痛み」などと表現されます。重症の場合はすぐに倒れて死に至る危険性もあります。くも膜下出血が疑われた場合は、まず早急に頭部CT検査を行います。CT検査でわからない場合もありますので、疑わしい場合は総合病院へ救急搬送させていただきます。
動脈の壁が裂けて、血流がその中に入る状態を動脈解離と呼びます。裂け方によって脳梗塞を発症したり、逆に脳出血を発症したりします。椎骨脳底動脈に発生することが多いです。原因としては外傷などが引き金になったものと、明らかな原因が不明の特発性のものとに分けられます。椎骨脳底動脈の解離性動脈瘤の初期の症状は、急性に起こる一側の首や後頭部の持続的な痛みです。これは動脈壁が引き裂かれて解離するときに感じる痛みであります。初期の場合は頭部CT検査では分からず、頭部MRI検査を行う必要がありますので、疑わしい場合には総合病院に連絡させて頂きます。
頭蓋骨の内側にできた腫瘍の総称です。脳腫瘍はいろんな部位からさまざまな種類の腫瘍が発生します。脳腫瘍は、その場所から生じた原発性脳腫瘍と、体の他の部位のがんが転移してきた転移性腫瘍とに分けられます。脳腫瘍はあらゆる世代に見られるのが特徴です。若い人にもできるので要注意です。CTやMRIなどを用いた画像検査で判断します。強い頭痛がする、食事と関係なく嘔吐をする、視力がおかしい、初めてけいれん発作を起こした、といった症状がみられた場合は、脳腫瘍の可能性もあるため、早急に受診してください。
髄膜は脳を包み込んで保護する役割を持っています。この髄膜に細菌やウイルスなどが感染し、炎症を起こした状態を髄膜炎といいます。頭痛、発熱、嘔吐、首の硬直などが特徴的な症状で、炎症が脳まで達すると意識障害やけいれんが起こります。髄膜炎の症状は出始めの様子が風邪と似ていることから、正直見極めが難しい場合もよくあります。しかし、迅速に治療を行わないと命に関わることもあり、緊急での対応が必要となる場合もあります。診断には髄液検査を行う必要性があるため総合病院へ救急搬送させて頂きます。余談ですが細菌やウイルスの種類によっては、ワクチンを接種することで予防できます。予防できる病気はしっかり予防しましょう。
巨細胞性動脈炎は、血管炎と呼ばれる病気のグループに含まれ、高齢の方に起こり、主に頭部の動脈がつまって症状を起こす病気です。ステロイドが効くことなどから、免疫の異常によって起こる自己免疫疾患と考えられています。拍動性の頭痛が特徴的な症状で、他にも炎症が起こる血管によって視力障害、脳神経障害、四肢運動障害、心血管障害などの症状がでることもあります。高齢の方で初めて頭痛がするようになった場合には要注意です。
三叉神経は顔の触覚や痛覚、冷熱感、口腔・鼻腔の感覚などを脳に伝える神経で、これに異常が生じることで顔に強い痛みを生じる病気です。顔の感覚を支配している三叉神経の付け根の血管が神経を圧迫することで起きるといわれています。顔面に電気が走ったような強い痛みが、一瞬または数秒ほど続きます。洗顔、歯磨き、髭剃り、咀嚼など、さまざまな動作によって痛みが誘発されたりします。顔の片側に出ることが大半で、痛み以外の症状はほとんど見られません。診断したのちは神経痛に効果のある薬剤で治療を開始します。
鼻腔の周囲にある空洞を副鼻腔といいます。この副鼻腔が風邪などのきっかけで炎症を起こし、それが長引いて慢性的に続くものを慢性副鼻腔炎といい、副鼻腔にずっと膿がたまっている状態となります。そのため「蓄膿症」とも呼ばれています。近年は原因不明で治りにくい慢性副鼻腔炎「好酸球性副鼻腔炎」が増えております。粘りのある黄色い鼻水が出る、喉にたんが絡む、鼻から喉へ鼻水が垂れる後鼻漏などの症状が出ます。頭痛や目の奥、頬の辺りに痛みを感じることがあります。CT検査で炎症の有無や範囲を調べたりします。治療は抗生剤を長期間服用する薬物療法が基本です。好酸球性副鼻腔炎の場合はステロイド内服薬などを使います。
子どもの頃に感染した水痘・帯状疱疹ウイルスが、免疫力が下がったときに再び活動することによって起こる病気です。帯状に痛みを伴う赤い発疹や水ぶくれなどが生じます。ピリピリ・チクチクといった痛みが起こります。発疹がひいても痛みのみが残ることがあり、その状態は「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれています。帯状疱疹が現れる場所によって、難聴、顔面神経まひ、角膜炎・網膜炎などの合併症を引き起こすこともあり注意が必要です。できるだけ早く抗ウイルス薬による治療を始めるのが望ましいので、疑わしい場合には早めに受診してください。また、50歳以上の場合は、水痘ワクチンを接種することも推奨されていますのでご相談ください。
こめかみから目のあたりがズキズキと脈うつように痛むのが特徴です。吐き気を伴い、光・音・気圧や温度の変化に対して敏感になることも多いです。周期的に痛みが起こり日常生活に支障を来たすこともあります。三叉神経の炎症が関わっていると考えられています。20代~40代の女性に多く、生理前から生理中にかけて頭痛が起こりがちであるため、女性ホルモンとの関係性も疑われていますが、男性にも起こります。人によっては、痛みの予兆があります。発作時に飲む頓服の頭痛薬だけではなく、予防薬を組み合わせることが重要です。痛み止めを飲み過ぎている場合には、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)に陥っている可能性もあるため、注意が必要です。
過度の緊張やストレスなどが関連しているとされる頭痛の総称で、もっとも一般的で患者数が多い頭痛です。頭全体、もしくは後頭部から首にかけて締めつけや圧迫感があり、拍動感はないことが特徴です。精神的なストレスのほか、一定の姿勢を長時間継続すること、疲労による筋肉の緊張、血管の圧迫などによって発症します。
三叉神経・自律神経性頭痛(TACs:タックス)とは、目の奥や目の周りが非常に痛む「顔面痛」と同時に、涙や鼻水などの「自律神経症状」が現れる頭痛の総称です。この頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛と同じ「頭痛そのものが病気」とされ、一次性頭痛に分類されます。TACsに分類される頭痛は、短時間の発作で片側にだけ現れることが多いとされます。具体的には、顔面や頭部の感覚を制御する三叉神経が過剰に活発になり、その過剰な興奮によって副交感神経系が活性化されることにより、鼻水や鼻づまり、眼球結膜の充血(赤くなる)、涙が出る、まぶたが腫れる・下がる、瞳孔が縮む、おでこや顔から汗が出るなどの自律神経症状が現れると考えられています。
片側の目の奥からこめかみにかけて、突き刺すような激しい痛みを伴うのが特徴の頭痛です。20~40代の男性に多く発症します。また目の充血、涙、鼻詰まり、鼻水などを伴うことも多いのが特徴です。発作時には痛過ぎて飲み薬が飲めず、痛み止めの注射や点鼻薬を使います。また酸素吸入も効果があり、医療用酸素を15分程度吸入すると症状が和らぐ場合があります。最近酸素吸入は重度の患者には保険適用となりました。
薬物乱用頭痛とは頭痛薬を、慢性的に服用することにより起こる頭痛です。素因として感受性のある人(主に片頭痛もち)が、原因となる薬剤を連用することにより引き起こされると考えられています。治療の目標は頭痛薬を中止する、あるいは適正使用に戻すことです。離脱に成功してくると、頭痛のない日が続き、頭痛が起こっても頭痛薬で楽にコントロールできてきます。病気をしっかりと認識して、再び薬物乱用頭痛に陥ることがないように注意することが大切です。
頭部の片側にズキンズキンとした拍動的な痛みを感じます。両側もあります。
片側の前額部からこめかみに鋭い激痛を感じ、数日後には疼痛部位に一致した発疹が現れます。
片側の頬部や下顎部を中心に、電撃痛を感じることがあり、食事や会話で痛みが誘発されます。
眉の上や頬部に鈍痛を感じ、頭を下にすると痛みが誘発されます。歯性上顎洞炎の場合は、上の歯を叩くと痛みが走ります。
片側の目の奥がキリキリと痛み、涙や鼻水が出ることがあり、毎日数十分から数時間持続することが特徴です。
緑内障など眼科疾患によって引き起こされる痛みも考えられます。
肩こりやストレス、睡眠時無呼吸などが原因で起こる痛み。後頭部を中心に全体的にぎゅーっと締め付けられるような感覚があります。
拍動性の痛みがあり、こめかみ周囲が一般的な痛みの場所ですが、後頭部が痛むこともあります。
片側の耳の後ろから後頭部、首筋、頭頂部に起こり、数秒の短い鋭い痛みを不定期に繰り返します。首を動かした時に痛むことがあります。時間とともに痛む場所が首の付け根から頭頂部に移動することもあります。
片側の首筋から後頭部にかけて持続する強い拍動性の痛みがあり、血圧の上昇も伴います。最重症例ではくも膜下出血や脳梗塞が生じて生命に関わる状態になることがあります。
運動によって誘発される頭痛です。頭蓋内疾患が存在しない場合を労作性頭痛と呼びます。筋力トレで発症するケースが多いです。類似するものに咳で誘発される咳嗽性頭痛、性行為に伴う性交時頭痛などもあります。
頭頂部を中心に頭全体が痛みます。頭部打撲後、頭痛や頭重感、手足の筋力低下、言語障害、食欲低下等の症状が1か月以上後に現れる場合には、慢性硬膜下血腫が疑われます。
片頭痛の治療には、薬の種類や使い方が様々あります。医師は、患者さんの状態や薬の効果・副作用を考慮して、最適な薬や使い方を選択します。
一般的に、小児や妊娠・授乳期の方はアセトアミノフェンを使います。一方、片頭痛が軽度~中等度の場合にはNSAIDs、中等度~重度の場合にはトリプタン製剤という薬が使われます。ただし、NSAIDsが効果がない場合にはトリプタン製剤に変更することもあります。
トリプタン製剤には5種類ありますが、どの薬が最適かは患者さんによって異なります。医師は、患者さんの年齢や性別、過去の使用歴などを考慮して、薬を処方します。しかし、薬の効果や副作用は個人差が大きいため、最初に処方した薬が合わない場合もあります。医師は、薬の量を調整したり、別の薬を試したりしながら、患者さんに合った薬や使い方を見つけていきます。
トリプタン製剤の効果が弱い場合には、ジタン製剤の使用を検討します。2022年4月に、イーライリリーから新たな薬剤であるラスミジタン(レイボー®)が発売されました。これは従来のトリプタン製剤に代わるジタン製剤の一つで、片頭痛の治療に使用されます。トリプタン製剤とジタン製剤の違いは、作用するセロトニン受容体が異なることです。トリプタン製剤は、血管収縮を促すため、脳や心臓の血管を収縮させる可能性があります。一方、ラスミジタンはセロトニン受容体サブタイプ5HT-1Fに選択的に作用し、血管収縮を起こさずに鎮痛効果を発揮すると考えられています。そのため、脳血管疾患の既往や心疾患を合併する人にも使用できます。臨床試験では、片頭痛発作から1時間以上経っても鎮痛効果を発揮していることが確認されています。トリプタン製剤は発作後すぐに内服する必要があったため服用のタイミングに困っている方にも有効です。
頭痛の回数が多い方は予防薬の適応です。1ヶ月に10回以上頭痛薬を飲む場合には導入を検討します。もちろん頭痛治療薬単独で痛みが取り切れない場合にも予防薬の導入を検討します。
心臓や血管に働きかけ、片頭痛発作を抑える作用があります。主なものに、ロメリジン(ミグシス®)やベラパミル(ワソラン®)があります。
脳内の神経興奮を抑え、片頭痛発作を防止する作用があります。バルプロ酸(デパケン®、セレニカ®)、トピラマート(トピナ®)、レベチラセタム(イーケプラ®)、ガバペンチン(ガバペン®)があります。
心拍数を下げ、血圧を下げる効果があり、片頭痛発作を抑制する効果があります。プロプラノロール(インデラル®)があります。
脳内の物質のバランスを整え、片頭痛を防止する効果があります。アミトリプチン(トリプタノール®)、デュロキセチン(サインバルタ®)があります。
漢方薬には、片頭痛の症状に対する効果があるものがあります。代表的なものには、呉茱萸湯、釣藤散、五苓散があります。
CGRPという物質を抑制することで、片頭痛発作を防止する効果があります。エムガルティ®、アジョビ®、アイモビーグ®があります。
一般に「めまい」と言われるものには、さまざまな症状があります。天井や自分の周囲がぐるぐる回る、体がぐらぐら、ふわふわした感じ、気が遠くなりそうな感じ、目の前が真っ暗になる感じなどです。立ち上がったときに目の前が暗くなるような場合は「立ちくらみ」と呼ぶこともあります。このような「めまい」の原因になる病気は一つではありません。
代表的なものは、耳の奥の内耳という部分にある、体の姿勢を保つ器官が何らかの異常を来して起きる内耳性のめまいです。耳石が三半規管内に浮遊しておこる良性発作性頭位めまい症や内耳のリンパ水腫によっておこるメニエール病などがあります。突発性難聴や前庭神経炎もめまいを引き起こします。
内耳性めまい以外にも脳卒中や脳腫瘍などの脳の病気、心臓や低血圧など循環器の病気、パーキンソン病など神経の病気などさまざまな病気が考えられます。
また薬の副作用などが原因になることもありますから、原因に応じた治療を行うことが重要です。
原因がはっきりと分からなかったフワフワするめまいに対して2017年に持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)という機能性疾患が新しく定義されました。
このような特徴がある場合PPPDを疑います。心理検査では不安症やうつを合併することが多いです。PPPDは精神疾患を合併する場合もしない場合もありますが、いずれの場合も抗うつ薬として使われているSSRIが有効であります。前庭リハビリテーションや精神療法の一種である認知行動療法がPPPDに有効であるとの報告もあります。今まで「もう歳だから」で諦めていた方も一度相談してください。一緒に頑張りましょう。
前庭性片頭痛とは、頭痛を伴うめまいの症状です。めまい発作時には強い頭痛も同時に起こることがあります。以前は「片頭痛関連めまい」と呼ばれていましたが、現在は「前庭性片頭痛」と診断されます。
片頭痛は、4~72時間持続する片側性、拍動性の頭痛で、中等度~重度の強さが特徴的です。日常的な動作により頭痛が増悪することが多く、悪心や光過敏・音過敏を伴うこともあります。前庭性片頭痛は、30~40代の女性に多く、めまいの症状は回転性のものから浮動性のものまで多様です。
片頭痛の原因はまだはっきりと特定されていませんが、脳内の神経の炎症や血管拡張が関係していると考えられています。女性の場合、月経との関連性も指摘されています。
前庭性片頭痛を疑う場合には、片頭痛の治療も行われます。片頭痛の治療には、急性期治療と予防的治療があります。どちらも内服薬により頭痛とめまいの症状を改善させることができます。一般的なめまいの治療に加え、適切な片頭痛治療を行うことが大切です。