若いのに痔でお悩みの方、もしかしてクローン病かも?
- 2021年1月25日
- 消化管疾患
・どんな病気?
クローン病は1932年にアメリカのマウントサイナイ病院のクローン先生が発見した病気です。腸に慢性的な炎症がおき潰瘍性大腸炎同様にびらんや潰瘍を作ります。発見最初は小腸の病気と思われたのですが、実際は口から肛門まで消化管全てに炎症がおきます。その中でも小腸と大腸のつなぎ目あたりが一番症状が出やすいです。10代から20代の若者に多く発症します。潰瘍性大腸炎とは異なりタバコを吸っていると発症しやすいです。潰瘍性大腸炎と同様難病指定されています。日本では5万人弱の人がかかっています。
・症状は?
長く続く腹痛、下痢、発熱、貧血、体重減少などですね。状態が悪化すると腸が部分的に狭くなって食べ物がつっかえたり、腸に穴があいたり、膿を作ったりします。また関節痛や皮疹、目の虹彩にも炎症が出たりもします。
・原因は?
これまた分かっていません。なんらかの遺伝的要素を背景に、食べ物や腸内細菌に対して免疫が過剰に反応していると考えられています。
・検査は?
症状からクローン病を疑ったら胃カメラ・大腸カメラで検査をします。若いのに肛門が膿んだり痔瘻ができていれば要注意ですね。胃にも大腸にも異常がなく病変が小腸のみの場合もあるので疑わしい場合は小腸に造影剤を流す検査をすることもあります。いきなりカプセル内視鏡をして小腸に病変があってカプセルが詰まってしまうと特殊な内視鏡で取りにいかねばならず患者さんはもちろんですが医者も泣きたくなります。
・診断は?
基本は内視鏡診断です。この2つどちらかがあれば確定です。
①敷石像 残った正常な部分が石畳のように見える
②縦走潰瘍 潰瘍が手前から奥に続く
アンコウメディカルクリニックより画像引用2つがない場合は生検組織の顕微鏡検査や胃カメラなどの所見で総合的に判断します。腸結核が紛らわしい時がありますが、腸結核にクローン病の治療を行うと悲惨ですので要注意です。長瀬智也さん主演の病理医ドラマでそんなシーンがあった気がします。
・治療は?
クローン病は残念ながら完治できる病気ではなく付き合っていかねばならない病気です。寛解と言われる症状がない状態を続けることが治療の目標です。
①食事療法
消化不要の食べ物(飲み物?)エレンタールが基本になります。正直言ってまずいです。ですからアメリカ人は飲まないって笑い話で聞きました。
②5ASA製剤
潰瘍性大腸炎にも出てきた炎症を抑える薬です。アサコールやリアルダは大腸をターゲットにした薬ですので、クローン病の場合はペンタサを使います。
③ステロイド
協力に炎症を抑える薬です。従来のステロイドは長期使用で色々と副作用がありましたがゼンタコートは腸で吸収された後に肝臓で分解されるので副作用が抑えられています。ただ症状が重い場合には従来のステロイドの方を炎症を抑える力が強いために使います。
④抗生剤
腸内細菌をやっつけるために抗生剤を使うことがあります。これが効果があるということがクローン病も腸内細菌が関係していることの証明になりますね。
⑤免疫抑制剤
潰瘍性大腸炎同様にステロイドがやめられない時にはイムランやロイケリンを使います。NUDT15遺伝子多型で副作用が予測できます。
⑥生物学的製剤・バイオ製剤
従来の化学化合物ではなく生きた細胞を使って作られる薬です。クローン病の場合は炎症を引き起こす物質であるTNFα(腫瘍壊死因子α)などをターゲットとした薬が使われます。炎症物質をピンポイントにターゲットにしているのでめちゃくちゃ効きます。これが出てからクローン病は治せる病気に近づきました。薬代がめちゃくちゃ高いので難病医療費助成制度を使いましょう。もちろん事前にB型肝炎、結核、非結核性肺抗酸菌症などのチェックは必須ですよ。
・外科治療
炎症のコントロールが出来ずに腸が破れたり、狭くなって詰まってしまったりした場合には外科手術が必要となる場合もあります。肛門の異常も外科治療が必要ですね。
・まとめ
クローン病は放っておくと腸管がボロボロになってしまう手強い病気です。以前は症状の改善しか望めませんでしたが、生物学的製剤の登場で合併症を減らすことが可能になってききました。小腸がボロボロになってからでは遅いです。早期発見早期治療が大切ですので症状ある方は気軽に相談してください。
当院では体格や手術歴などに応じて使い分けるために2種類の大腸カメラを用意しております。送気は空気ではなく二酸化炭素ガスを使っていますのでお腹の張りも少ないです。痛みに敏感な方にはマイケルジャクソンも愛用しすぎた麻酔薬を適切に使って寝てもらうこともできます。よろしくお願いします。
愛知県名古屋市中村区本陣通2-19
内科・内視鏡内科・糖尿病内科・整形外科
ヴェルヴァーレ本陣クリニック
院長 荻野仁志