10人に1人がなる大腸がんは早期発見早期治療すれば治せる病気です。
- 2021年1月26日
- 消化管疾患
・どんな病気?
大腸がんはその名のとおり大腸に癌ができる病気です。とても増えていて1年間で約13万人が大腸がんと診断されています。10人に1人は大腸がんと診断される確率です。30代後半や40代から大腸がんは増えはじめますので働き盛りでも要注意です。特に大腸がん家系の人は早めに検査を受けましょう。
・大腸って?
食べ物は口から入って便となって肛門から出てきます。
口→食道→胃→十二指腸→小腸→大腸→肛門
肛門の手前にあるのが大腸です。
役割としては便の水分を吸収して便を作ります。ですから大腸の動きが悪いと便秘になりますし、大腸をたくさん切除したりすると下痢になります。食べ物の栄養吸収は小腸で行われます。
・症状は?
早期がんの場合は何もありません。しかし目に見えないレベルで便に血が混じることがありますので検便の検査は有効です。がんが進行すると便秘・下痢・腹部膨満感・違和感・血便などが出てきます。大腸の中でも上流にあたる上行結腸は便に水分が多い状態ですので進行がんになっても症状が出にくいため見つかった時にはかなり進んでしまっていることがあります。
・検査は?
大腸カメラが基本になります。下剤を飲んで便を全部出しきってから肛門から内視鏡を入れる検査です。
便鮮血2日法は感度約80%と高いので、毎年便鮮血検査を行い、異常があれば大腸カメラを受けましょう。
・大腸CT(コロンCT)
最近行われている大腸CTは下剤と造影剤を飲んだ後に炭酸ガスで大腸を膨らませた状態でCT撮影を行う検査です。異常があれば結局大腸カメラをしていただくことになるため通常はお勧めしませんが、手術などの既往があり癒着が強い方などにはお勧めです。
・内視鏡で治せる腫瘍は深さ1ミリまで
大腸カメラで腫瘍を見つけたら生検といって組織を摘んできて顕微鏡での病理検査にまわします。それでがん細胞があれば大腸がんと診断されます。昔は内視鏡で取れる腫瘍は大きさに限りがありましたが胃がんと同様ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の進化で理論上取れる大きさに限りがなくなりました。しかし深さにはルールがあって腫瘍の深さ1ミリまでです。これ以上の深さの場合はリンパ節転移の可能性が増えてくるために外科手術での切除が基本となります。
早期がん 進行がん 東京都立駒込病院より画像引用・クリーンコロン
日本のガイドラインでは5ミリ以下のポリープはがんのリスクが低いために様子見、6ミリ以上のポリープは切除推奨になっています。それに対して欧米のガイドラインでは見えるポリープは全て切除が推奨されています。これはどちらが正しいというわけでなく日本は安いコストで頻回に大腸カメラが受けられるのに対して欧米ではそうではないという前提があります。日本のガイドラインは基本的にコストを考えずに最良を求めますが海外はコストありきで考える違いもあります。日本では約1.5万円で受けられる大腸カメラですがアメリカでは10倍の15〜20万円です。日本では頻回に検査できるので様子を見るゆとりがありますが欧米ではそうでないこともありクリーンコロンという概念ができたのだと思います。ただ実際クリーンコロンの方が大腸がん発症リスク低いというデータもあるため、個人的にはせっかくしんどい思いをして大腸カメラを受けていただく以上取れるポリープは取って安心していただきたいと考えております。
いざわ内科・消化器内科クリニックより画像引用・コールドポリペクトミー
最近大腸ポリープ切除方法の主流が変わりました。昔はスネアと言われる金属の輪に電流を流して焼き切っていましたが、後々の出血や腸に穴があくリスクが問題になっていました。スネアに通電せずにそのまま切除するほうが出血や穿孔リスクが低いというデータが出たために最近ではこのコールドポリペクトミーが主流になっております。ただもちろん欠点もあります。腫瘍成分からゆとりを持って切除することが困難なので最悪癌を取り残すリスクが増えてしまいます。ですので当院では癌が疑われる場合には従来通り電流を流して焼き切ります。癌の心配が少ない小さなポリープに対してはコールドポリペクトミーを行います。ケースバイケースでベストを尽くします。
三愛病院より画像引用
・まとめ
大腸がんは年々増えており男女ともに気をつけていただきたい病気のひとつです。まずは検便検査で血が混じっていないかをチェックしていただいて混じっていた場合には大腸カメラを受けましょう。早期発見早期治療が大事です!
当院では体格や手術歴などに応じて使い分けるために2種類の大腸カメラを用意しております。送気は空気ではなく二酸化炭素ガスを使っていますのでお腹の張りも少ないです。痛みに敏感な方にはマイケルジャクソンも愛用しすぎた麻酔薬を適切に使って寝てもらうこともできます。よろしくお願いします。
愛知県名古屋市中村区本陣通2-19
内科・内視鏡内科・糖尿病内科・整形外科
ヴェルヴァーレ本陣クリニック
院長 荻野仁志