糖尿病とアルコール
- 2020年4月22日
「糖尿病になるとアルコールは飲めない」は誤解
「糖尿病になるとアルコールを飲めない」という言葉には、2つの誤解があります。
実際には、糖尿病患者でもアルコールを適度に摂取することができます。アルコールは、人類が生まれる遥か以前から存在する物質であり、楽しみやストレス解消の手段として親しまれています。糖尿病があるかどうかに関わらず、アルコールについて理解し、適切に付き合っていくことが大切です。
アルコールとは?
アルコールは、果物などの糖分と酵母菌がある暖かい環境下で自然に発酵することでできます。現代でも、簡単に発酵させたお酒があります。例えば、映画「君の名は」で登場する口噛み酒は、お米を口で噛み、唾液の酵素でデンプンを糖に変え、吐き出したものを容器に入れて放置することで作られます。
お酒は古代から人類の文化や風土に根付き、宗教儀式やお祝い事などで重要な役割を果たしてきました。日本でも、お酒は神と人とを結びつける神聖なもので、お供えや三三九度などにその風習が残っています。
栄養学的には、アルコールはカロリーが高い栄養素です。しかし、アルコールは他の栄養素と異なり、体内で蓄積されずに代謝されるため、「エンプティカロリー(空のカロリー)」とも呼ばれます。つまり、アルコール自体で太ることはありません。ただし、糖尿病患者はアルコールを控えた方が良いとされています。なぜなら、アルコールは血糖値を上昇させ、糖尿病のコントロールを難しくするためです。
糖尿病にアルコールがよくないとされるポイント
糖尿病の人がアルコールを飲むと、以下の理由で良くありません。
・お酒には糖質が含まれる場合があるため、注意が必要です。蒸留酒(焼酎、ブランデー、ウイスキー)には糖質は含まれませんが、日本酒、ビール、ワインには含まれています。
・アルコールを飲むと食欲が増進し、ついつい食べ過ぎてしまいがちです。
・アルコールはインスリンの働きに影響を与えるため、血糖値をコントロールするインスリンの分泌や作用に影響を及ぼすことがあります。
・過剰なアルコール摂取により、肝臓に蓄えられている糖分を利用できなくなり、低血糖症状を引き起こす可能性があります。飲み過ぎた後のラーメン欲求は、低血糖症状が原因かもしれません。
・過剰なアルコールは、糖尿病だけでなく、他の疾患の原因にもなることがあるため、肝臓や膵臓が障害されることで、糖尿病を悪化させたり、新たに発症させることがあります。
以上の理由から、血糖コントロールが安定していない場合、糖尿病の人はアルコールを制限する必要があります。
糖尿病でも、血糖値が安定していればアルコールを禁止する理由はない
糖尿病の人でも、血糖値が安定していれば、アルコールを禁止する必要はありません。実際に、適量の飲酒は糖尿病の発症を抑制することが多くの研究で示されています。
また、糖尿病の有無に関係なく、適度にアルコールを摂取している人は、まったく飲まない人よりも死亡リスクが低いとも言われています。ただし、過度な飲酒はさまざまな疾患を引き起こし、寿命を短くすることがあります。
糖尿病に対して、アルコールがよくないとされる理由は、糖尿病でない人にも当てはまるものです。糖尿病であっても、血糖値が安定している場合には、アルコールを我慢する必要はありません。糖尿病になっても、適量の飲酒を心がけることが大切です。
アルコールを我慢することでストレスが生じることもあります。ストレスによって、過度な飲酒をしてしまい、健康に悪影響を与えることもあります。そのため、血糖コントロールをしっかり行い、楽しくアルコールを飲むことが重要です。
愛知県名古屋市中村区本陣通2-19
内科 内視鏡内科 糖尿病内科
ヴェルヴァーレ本陣クリニック
院長 荻野仁志