NASHただの脂肪肝ではありません。肝硬変になって命に関わる病気です。
- 2021年1月30日
- 肝胆膵疾患
・どんな病気?
非アルコール性脂肪肝はアルコールを飲まない人の脂肪肝です。肝臓に脂肪がついているだけと思わないでください。C型肝炎などのウイルス性肝炎と同様に炎症をおこし放っておくと同じように肝硬変になってしまう場合があります。炎症をおこさない脂肪肝NAFL(ナッフル)と炎症をおこす脂肪肝炎NASH(ナッシュ)とに分けられています。このNASHが要注意です。肥満人口の増加に伴い増えています。
・症状は?
ありません。肝臓は沈黙の臓器と言われるだけあってこの程度では症状出ません。それが逆に怖いのです。病気が進行すると一般的な肝障害同様に疲労感などが出てきます。痒みも要注意ですね。
・診断は?
エコー検査で脂肪肝を認めた上で、飲酒歴を聞いて判断します。アルコール摂取量が1日30g以上あればもちろんアルコール性脂肪肝となります。念のために他の肝疾患も血液検査で否定しておきます。
基本がメタボの肝臓病ですから20歳時と比較して10kg以上体重が増えていないかや高血圧、高コレステロール、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などの合併がないかも調べます。
血液検査ではASTとALTに注目です。普通の脂肪肝ではALTが高値ですがASTが高くなっているとNASHの可能性が高くなります。またヒアルロン酸やコラーゲンの数値が高いのもNASHを疑います。
・肝生検
ガイドラインでは単なる脂肪肝か脂肪肝炎かを区別するために肝臓に針を刺して組織を持ってくる肝生検が勧められていますが現実的にはなかなか難しいですよね。仮にその時単なる脂肪肝でもずっと放置していいわけでもないですし。脂肪肝は基本脂肪肝炎NASHとして対応する必要があると思います。
・治療は?
毎度おなじみ食事、運動、薬物治療です。まずは減量してそれでもダメなら薬ですね。
・食事
ガイドラインではカロリーを30kcal×体重kg、タンパク質を1〜1.5g×体重kg、脂質をカロリーの20%以下が推奨されています。カロリー比でまとめると炭水化物60%、タンパク質20%、脂質20%ですね。もちろん長期的にはこれで問題ありませんが短期的にはもっと炭水化物を減らして脂質を増やしたほうが有効だと思います。脂肪肝は基本余った炭水化物によって作られますからね。
・運動
有酸素運動と筋トレの組み合わせですね。有酸素運動を行うと肝臓から糖が分泌されますし、筋肉は肝臓同様に糖を取り込みますから筋肉が増えると肝臓への糖の取り込み負担が減ります。
・薬物治療
①抗酸化療法 ビタミンEを使用します。
②糖尿病治療薬
ピオグリタゾンはNASHの繊維化を含めて改善効果があります。
SGLT2阻害薬は血液中の過剰な糖を尿に排出しますので脂肪肝を改善します。
GLP1受容体作動薬も脂肪肝に直接かつ間接的に効果があることが証明されています。
③脂質異常症治療薬
スタチンは肝機能を改善させるデータがあります。
エゼチミブ小腸からの脂質吸収を抑えるため肝機能・肝障害の改善を認めます。
昔はピオグリタゾンとエゼチミブしか使える薬がありませんでした。使ってみた感想としては多少効くかな?といった程度ですね。正直。
それよりもSGLT2はかなり効く印象です。脂肪肝ってのは余った糖が肝臓に蓄えられてできますので、余った糖を尿から外に出すSGLT2阻害薬は理にかなっていますよね。しかもお腹が空いている時の血糖値も下げますから、その分肝臓から糖が出されますし。今は糖尿病ない人には保険では使えませんが将来的に使えるようになるかもしれませんね。
NASHから肝硬変にまでなってしまうと空腹時低血糖の問題が出てきますからSGLT2阻害薬よりもGLP1受容体作動役がベストでしょう。GLP1受容体作動薬は低血糖時には血糖降下作用がないため安心です。しかもGLP1受容体は肝臓にもあり脂肪沈着を抑えるのみでなく脂肪溶解にも効果があります。今までは注射薬だけでしたが飲み薬も出ましたし今後のガイドラインが楽しみですね。
・まとめ
非アルコール性脂肪肝炎NASHはただの脂肪肝とは違い放っておくとまずい病気です。実際何人か肝硬変になって亡くなっている人を経験しています。肝硬変になってからでは遅いのです。早期発見早期治療、予防治療がとても大切です。症状出る前にご相談ください。一緒に頑張りましょう。よろしくお願いします。
愛知県名古屋市中村区本陣通2-19
内科・内視鏡内科・糖尿病内科・整形外科
ヴェルヴァーレ本陣クリニック
院長 荻野仁志