なんとなく体が痒い方、原発性胆汁性胆管炎を調べてみてはどうでしょう?
- 2021年1月31日
- 肝胆膵疾患
・胆汁とは?
肝臓には胆汁という消化液をつくるという働きがあります。胆汁は肝臓の中の肝細胞という細胞によってつくられたあと、胆管を通り、いったん胆嚢で蓄えられた後十二指腸に流れこみます。
・どんな病気?
原発性胆汁性胆管炎という病気は、肝臓の中のとても細い胆管が壊れる病気です。胆汁の流れが滞ってしまうため肝臓がダメージを受けてしまいます。中年以降の女性に多い病気です。
・原因は?
この病気の原因はまだわかっていませんが、胆管が壊れる原因として免疫バランスの異常があります。すなわち自らの免疫反応によって胆管が攻撃されると考えられています。
・検査は?
血液検査をするとALPやγGTPなどの数値が上がります。さらに抗ミトコンドリア抗体という抗体が検出されるのがこの病気の特徴です。
あとはエコーやCT検査、MRI検査などで胆管が枯れ枝のようにいびつに細くなっているのが分かります。
・症状は?
初期の段階であれば肝臓の中の胆汁の流れは多少滞ってはいるものの肝臓の働きも正常ですので、自覚症状はほとんどありません。ただおよそ30%程度の患者さんは皮膚のかゆみを自覚しています。
病気が進行すると胆管が破壊されて胆汁の流れがさらに悪くなります。すると、胆汁に含まれる成分が血液中に逆流するため黄疸が出て全身の強いかゆみが起こります。強い疲労感やだるさを感じることもあります。胆管だけではなく肝臓本体も破壊され、徐々に肝硬変へと進行します。
・合併症
自己免疫バランス異常の病気を起こしやすい体質の方では胆管だけではなく他の組織・細胞も自己免疫によって攻撃されることがあるため、原発性胆汁性胆管炎には他の自己免疫疾患がしばしば合併することが知られています。約15%の方に涙や唾液が出にくくなり、口や眼が乾燥するシェ-グレン症候群、約5%に関節リウマチ、慢性甲状腺炎が合併するとされており、これら他の自己免疫疾患の症状が目立つ場合もあります。
・治療は?
ウルソという薬に胆汁の流れを促進し病気の進行を抑える働きがあることが分かり、現在原発性胆汁性胆管炎に対して世界中で使われています。ウルソだけで十分に肝機能障害が改善しない場合、わが国ではベザフィブラートという中性脂肪を下げる薬がしばしば使われます。
・痒みの治療
強いかゆみに対して昔はアレルギーを抑える薬で有名な抗ヒスタミン薬が使われていました。最近は肝臓病で起こるかゆみに対する新しい薬(ナルフラフィン塩酸塩)が開発されており効果が認められています。
・肝硬変の治療
病気が進行して肝硬変に至った場合は、他の原因による肝硬変と同じ治療を行います(肝硬変の項参照)。しかし、これら様々な内科的治療を行ってもなおその効果がみられない場合、肝移植治療を検討することもあります。
・経過は?
ウルソが使用されるようになってから、原発性胆汁性胆管炎の経過は明らかに改善しました。ほとんど症状のない患者さんでは、薬を飲み続けていただくことによって、病気のない方と同じ日常生活を送ることができるようになっています。ウルソの効果が十分でない場合でも、上記のようにベザフィブラートを併用することによって、病気が進行し悪化してしまうことはかなり少なくなっています。
・まとめ
原発性胆汁性胆管炎は比較的レアな病気ですが、きちんと診断して治療すれば治る病気です。女性に多い病気ですのでお酒も飲まないのに健診で引っかかったら精密検査受けてくださいね。なんとなく痒みが出てきた方も一度ご相談ください。よろしくお願いします。
愛知県名古屋市中村区本陣通2-19
内科・内視鏡内科・糖尿病内科・整形外科
ヴェルヴァーレ本陣クリニック
院長 荻野仁志