内視鏡検査の際に有効な「NBI」
- 2021年6月14日
今回は「NBI観察」というものについてご説明いたします。NBIとは、「Narrow Band Imaging」の頭文字をとった略称で、日本語に訳すと「狭帯域光観察」と言います。
ものを見る際に、物体に光を照射しその吸収の程度で人はものを認識しています。日光下でものを見るときと蛍光灯や白熱灯の下でものを見るときとでは、ものの見え方が変わりますよね。それは、光源となるものが発する光の種類が違うため、物体が吸収する光の種類も異なってくるためです。
光が波であるということはご存知だと思いますが、光の種類とはどの帯域(波長)の光かということです。赤外線や紫外線は波長が極端に短いものや長いものに区分されています。
NBIは、390〜445nm(ナノメートル)と530〜550nmの2種類の範囲の波長の光を用いて、特定の物体を視認しやすくしたシステムのことです。この2種類の波長は血管の中を流れる赤血球によく吸収されることがわかっているため、NBIを用いると血管を視認しやすくなります。つまりNBI観察は通常の内視鏡検査の際に、より血管を強調するモードであります。
では、内視鏡検査時にNBI観察を用いる場面とはどのようなときでしょうか。食道がんは極めて早期の段階に診断ができれば、内視鏡手術(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)で治癒が可能な疾患です。ただ残念ながら食道がんは進行が早く、進行した場合は今なお根治が難しい場合も多く、外科手術や抗がん剤化学療法、放射線照射療法などの組み合わせが必要となります。胃がんや大腸がんに比べ、浸潤の程度が浅くてもリンパ節に転移するケースが多く、早期の状態で食道がんを見つけることが重要です。しかし早期の食道がんは、ごくわずかな発赤しかないこともあり、普通の内視鏡検査では発見することが困難でした。そのためルゴール染色などを利用しておりましたが手間がかかるため検査時間が長くなったり、気分不良などの副作用が生じておりました。そこでNBI観察が用いられるようになりました。
早期の食道がんは、表面に多数の腫瘍血管がありますので、周囲の正常粘膜よりも血管の密度が上昇し、NBIを用いることで密集した血管の部位を発見しやすくなるのです。
通常の内視鏡検査ではごくわずかに赤く変化している程度でも、NBIで見てみると茶色い変化がよく分かるようになります。通常の内視鏡検査のみでは見落としてしまう可能性のある、非常に分かりづらく小さな病変でも発見しやすくなります。
富士フイルムのLED光源搭載内視鏡システムは複数のLED照明の発光強度比を高精度に制御して、白色光と短波長狭帯域光を生成することができます。照射した光と画像処理を組み合わせることで、観察に適した画像を作り出す技術「Multi-Light Technology(マルチライトテクノロジー)」により、NBI同等のBLI「Blue Light Imaging」を可能としております。
当施設では、すべての内視鏡検査で食道をBLIで見ることを徹底しており、早期食道がんの発見に尽力しています。よろしくお願いします。
愛知県名古屋市中村区本陣通2-19
内科 内視鏡内科 糖尿病内科 整形外科
ヴェルヴァーレ本陣クリニック
院長 荻野仁志