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ブログ|「ヴェルヴァーレ本陣クリニック」名古屋市中村区本陣通にある内科

内視鏡抜去時間と検査精度

  • 2021年6月11日

前回「大腸内視鏡検査における精度管理」について説明しました。大腸腺腫性ポリープ同定率(ADR)について解説をしましたが、今回はより具体的な「大腸内視鏡検査における抜去時間」について解説致します。

大腸内視鏡検査は、準備段階を含めて大きく以下の工程に分けられます。

1. 検査前日までの前処置(飲み薬の種類とその方法)
2. 検査当日の前処置(飲み薬の種類とその方法)
3. 検査本番(盲腸までの挿入と、盲腸から肛門への抜去)

このいずれの工程も大腸内視鏡検査のQuality indicatorとなり得ることが報告されています。

検査本番は、肛門から大腸内視鏡を挿入し、大腸の一番奥である盲腸まで到達させます。この時点では大腸粘膜の詳細な観察は行わず、実際に細部を観察するのは盲腸から肛門にかけて抜去していく間です。

最初に肛門から挿入した時点では、大腸の内腔は空気量が足りずにつぶれており、少量の残便や腸管洗浄液(下剤)の残りが存在しています。細部を観察するためには、十分量の空気や二酸化炭素ガスを腸管に送り込んで内腔を拡張させ、便や腸管洗浄液の残りをきれいに洗いながら吸引する必要があります。

肛門から盲腸に挿入する際にこういった送気や吸引を行うと、腸がパンパンに張った状態になるため、非常に挿入しづらいし患者さんも苦しいのです。このため、挿入時ではなく抜去時に大腸粘膜の観察を行います。

よって大腸内視鏡検査における抜去時間とは、盲腸→直腸にかけて十分に腸管内腔を拡張させて、詳細に観察を行う時間の総計ということになります。長く観察すればするほど、大腸ポリープの発見率は増加するのでは?という考えのもと、これまで様々な研究がされてきました。

抜去時間とADRの関連性は、2006年に報告されました。抜去時間の平均が6分未満だった医師と、平均6分以上だった医師に分けてADRを比較したところ、それぞれADRが11.8%、28.3%と大きく差がついたことが示されました。その後も多くの追試がなされ、抜去時間6〜6.5分程度が十分なADRを達成するために不可欠な観察時間であることが示されています。

ポイントはポリープが見つからなかった時の抜去時間とADRの間には相関がありますが、ポリープを見つけて治療した場合には相関がなかった、という点です。ポリープが見つからなった時の抜去時間は、注意して観察している時間です。いかに、普段の検査から抜去時間を意識するのが重要か良く分かります。

抜去時間とADRの間に相関があるのであれば、抜去時間に一定の時間をかけるように意識するべきではないか?という疑問が出てきます。

もともと抜去時間が短かった検査医師が抜去時間の延長を意識したところ抜去時間の延長とともにADRも改善することが示されています。

内視鏡検査時の簡単な意識の違いでこれだけ検査成績は変わり得るのです。私も常に抜去時間の延長とADR維持を意識して検査して参ります。よろしくおねがいします。


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ヴェルヴァーレ本陣クリニック
院長 荻野仁志