急性腹症で命を落とさないための予防医療
- 2021年1月17日
- 消化管疾患
・どんな病気?
急性腹症とは命に関わる腹痛です。きちんと診断ができない状態でも緊急に対応が必要な場合があるために急性腹症という概念が作られました。心臓で言うところの急性冠症候群と同じですね。2015年に初めてガイドラインができました。
・検査方法は?
心電図・腹部エコー・腹部CTです。補助的に血液検査ももちろんしますが結果を待てないことも多いです。あと腹痛なのになぜ心電図?と思われるかもしれませんが心筋梗塞の痛みがお腹に出ることもあるためです。放散痛と言います。それと知っておいて欲しいのが基本はCT検査になると言うことです。急性腹症の場合、素早く客観的に検査できるのはCTがベストです。レントゲンでは得られる情報が少ないですし、エコーはガスに弱いので見えにくい場合も少なくありません。当院はもちろんCT完備していますよ。
・どんな病気があるの?超緊急バージョン
今にも命の危険がある危険な病気をまずは見つけます。心肺蘇生しながらの検査治療になることもあります。
急性心筋梗塞:心臓の血管が詰まり心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。胸でなくお腹の痛みがメインのこともあり要注意。
腹部大動脈瘤破裂:お腹の血管の瘤が破れる病気です。すぐにショックになります。
肺動脈塞栓症:エコノミークラス症候群のところで書いた病気です。いきなりショックになることもあります。
大動脈解離:急に血管の壁が裂けてしまう病気です。これもブログで取り上げていますね。
・どんな病気があるの?緊急バージョン
上よりはまだマシですが緊急に治療は必要です。
肝癌破裂:肝臓がんが破裂してしまう状態です。これも出血多量でショックになります。
異所性妊娠:いわゆる子宮外妊娠です。これも大出血します。若い女性が真っ青で倒れるのでびっくりします。
腸管虚血:腸への血流が悪くなり腸が壊死してしまう状態です。心房細動がベースにあって血栓が飛んだり、血管が狭くなって起こります。
重症急性胆管炎:胆石などによって胆汁の通り道が詰まりバイ菌感染して起こります。菌血症・敗血症になってのショックですね。他の疾患よりはまだマシですかね。
汎発性腹膜炎:腸管が破れたり胆嚢が破れたり盲腸が破れたりして腹膜に炎症が起きた状態です。
内臓動脈瘤破裂:内臓の血管に瘤ができて破れる病気です。
・治療は?
原因によって4つに分かれます。
①出血 血管の瘤が破れた場合ですね。カテーテル治療でのステント留置や外科手術が行われます。人工血管を埋め込みます。
②虚血 発症して間がなければカテーテル治療で治せることもありますが、腸が壊死したりしてしまえば外科手術が必要になります。壊死した部分を切除します。
③汎発性腹膜炎 消化管が破れているのが原因にありますので基本は外科手術になります。状態や場所によっては内視鏡治療や抗生剤だけでいける場合もあります。基本は破れているところを切除したり縫い合わせたりします。
④臓器の炎症 胆嚢炎・胆管炎などですね。胆管炎の場合は内視鏡治療、胆嚢炎の場合は外科手術が基本になります。
どれもこわい病気ばかりですね。どの病気にも苦い思い出があります。この状態になってしまっての緊急治療になると残念ながら亡くなってしまったり後遺症が残ってしまうことも少なくありません。そうならないためにも日頃からの定期検査と予防治療をお願いします。その方が結局お金の面でも安上がりですよ。よろしくお願いします。
愛知県名古屋市中村区本陣通2-19
内科・糖尿病内科・内視鏡内科・整形外科
ヴェルヴァーレ本陣クリニック
院長 荻野仁志