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ブログ|「ヴェルヴァーレ本陣クリニック」名古屋市中村区本陣通にある内科

肝硬変の治療も進んでいます。でもならない方がもちろんいいです。

・どんな病気?

肝硬変とは、慢性肝炎が長く続くことにより肝臓が硬くなった状態をいいます。慢性肝炎がおこると肝臓の細胞が壊れてまた再生します。傷でもそうですが再生する際には繊維化がおきて硬くなります。それが繰り返され最終的に肝臓は硬く小さくなってしまいます。

肝硬変では肝臓の機能が低下するために、腹水、肝性脳症、黄疸、出血傾向など、さまざまな症状が現れてきます。このうち黄疸、腹水、肝性脳症が認められる肝硬変を「非代償性肝硬変」と呼び、症状のないものを「代償性肝硬変」と呼びます。

・血液検査

血液検査で肝臓の働きが弱っていないかを確認します。肝臓にはタンパク質や脂質を合成する働きや、物質を処理して体外に排泄する働きなどがあります。合成する働きが弱くなると、血中のアルブミンや総コレステロールの値が低下し、血液を凝固させる成分も少なくなり血が止まりにくくなります。処理する働きが低下すると、ビリルビンというウンコ色素の血中濃度や肝臓の硬さを示すヒアルロン酸値などが上昇します。また脾臓への血流が増えて血小板が破壊され減少させます。

・エコー検査

肝硬変になった肝臓は、表面がでこぼこしていています。腹部エコー検査で肝臓の形や不均一な内部構造になっていないかをチェックします。腹水や腫れた脾臓も超音波検査で確認できます。肝硬変には肝がんが合併しやすいので、定期的に超音波検査やCTあるいはMRIで肝がんの有無をチェックしましょう。また定期的に血液検査を行い、肝がんのマーカーとされるAFPPIVKAⅡなどを肝機能とともに調べましょう。

・栄養

肝硬変患者さんは肝臓へ蓄えられている糖やアミノ酸が減っています。言わば貯金がない状態です。そのため空腹になるとすぐに低栄養になってしまうため栄養療法がとても重要です。

①アルブミン

肝硬変では蛋白質の合成が低下し、血液中のアミノ酸のバランスが悪くなります。血液中のアルブミン値は低下し、ロイシン、イソロイシン、バリンといった分岐鎖アミノ酸(BCAA)の血液中の濃度が低下します。分岐鎖アミノ酸の内服が、血液中のアルブミン値上昇に役立ちます。糖代謝、脂質代謝、免疫の働きによい影響があることも報告されています。余談ですが健康な人でも筋トレに有用です。筋肉の合成を促します。筋トレ中にはBCAAを!EAAもおすすめです!気になる人は山本義徳先生のYouTubeを見てください。EAA20gで大丈夫です!

②エネルギー

安静時のエネルギー源となる肝臓グリコーゲンが不足するため食事を摂取しないとすぐにエネルギー不足になってしまいます。肝硬変患者さんでは8時間絶食すると、健康な人が23日間絶食するのと同じ状態になるといわれています。そのため、エネルギー不足にならないように、14回以上の分割食や就寝前の夜食が勧められています。ただ肝硬変の場合糖の取り込みが悪いので、食後高血糖になってしまう場合は速攻型インスリンやGLP1などを併用するとより効果的です。

・肝臓が悪い人こそ筋トレを

以前は、肝硬変では安静が推奨されていましたが、最近では筋肉量の減少(サルコペニア)を防ぐのに運動療法は有用と考えられています。肝臓が悪い人はただでさえ筋肉が分解されやすいのでしっかりアミノ酸を補充しながら運動しましょう。さすがに黄疸、腹水、肝性脳症のある非代償性肝硬変では無理はできません。代償性肝硬変の患者さんには適度な運動が勧められています。会話できる程度の運動を継続することが大切です。気になる方はご相談ください。

・静脈瘤

腸から肝臓へと栄養を運ぶ門脈という血管があります。肝硬変では肝臓のなかを血液がスムーズに流れなくなり、門脈の血流が悪くなります。流れにくくなった門脈の血液は胃や食道、脾臓へと流れます。本来流れる血の量よりも多くの血液が流れるようになるために血管の瘤である静脈瘤を作ることがあります。この静脈瘤が破れることで大量に血を吐いてしまうことがあります。そうならないために出血リスクのある場合は内視鏡で食道静脈瘤破裂を予防します。EVLと呼ばれる内視鏡的静脈結紮術ですね。当院で簡単に施行できますので気になる方ご相談ください。

・腹水

肝硬変では腹部に体液が異常に溜まって腹水となり、お腹が張ってくることがあります。腹部エコー検査やCT検査で簡単に調べることができます。基本は利尿薬で治療します。昔は抗アルドステロン薬とループ利尿薬しかなかったために効果不十分で、お腹に針を刺して水を抜いたり、抜いた水を濃縮させて点滴して戻したり、アルブミンの点滴をしたりしていました。どれも一時的にお腹の張りは良くなりますがすぐに元に戻ってしまっていました。そこに新たに出てきたサムスカという薬です。腎臓で水の吸収にかかわるホルモンをブロックするV2受容体拮抗薬です。これが出てからは飲み薬だけで腹水治療ができるようになりました。さらに最近出てきた腎臓での糖の再吸収を抑えて利尿効果を高めるSGLT2阻害薬を組み合わせることで一般的な肝硬変の腹水治療に困ることはなくなりました。がんが合併している場合などはもちろん薬だけでは困難な時もありますのでそういった際には外科処置が必要になる場合もあります。

・肝性脳症

肝性脳症とは肝臓の働きが低下して本来脳には届かないような毒素が脳に入り込むことにより意識障害が出る病気です。食事の蛋白質が腸内細菌によって分解され、その過程でアンモニアが産生されます。このアンモニアは腸管から吸収され門脈に入り肝臓に運ばれます。肝臓がアンモニアを分解して解毒しますが、肝硬変のように肝臓の機能が低下している場合、アンモニアの血中濃度は上昇してしまいます。その他の有毒物質も同じように本来分解されるはずのものが処理されずに脳に届くため、いろいろな有毒物質により肝性脳症が引き起こされます。

・肝性脳症治療

アンモニア値が高くなり過ぎないように、薬物療法や食事療法を行います。

前述した分岐鎖アミノ酸BCAAを投与したり、また腸内細菌からのアンモニア産生を抑制する抗生剤を投与したりします。

ピロリ菌がいる場合にはピロリ菌を除菌することも有効です。ピロリ菌はアンモニアを産生して生きてますからね。

カルニチンや亜鉛の補充も大事です。肝臓が悪いと不足しがちでアンモニアの分解には必要です。

また脱水や感染症、消化管出血、便秘などにより肝性脳症が増悪するので、このような誘因をできるだけ避けるように注意します。

・まとめ

今回は肝硬変についてお話ししました。肝硬変は一昔前は末期がんのような扱いでしたが新しい薬のおかげでだいぶ対応できるようになってきました。それでもやはり非代償性肝硬変までいってしまうと正直厳しいです。なんとかその手前の代償性肝硬変の状態で抑えるように、そもそも肝硬変にならないように一緒に頑張りましょう!よろしくお願いします。

 

愛知県名古屋市中村区本陣通2-19

内科・内視鏡内科・糖尿病内科・整形外科

ヴェルヴァーレ本陣クリニック

院長 荻野仁志