自己免疫性肝炎は怖い病気ではありません。きちんと検査して治療しましょう。
- 2021年1月30日
- 肝胆膵疾患
・どんな病気?
自己免疫性肝炎は、免疫の異常が原因で発症する肝炎です。肝細胞が障害されて、血液検査では他の肝臓病と同じようにASTやALTが上昇します。中年以降の女性に好発するのが特徴ですが、若い女性や小児での発症も珍しくはありません。近年の傾向として男性の患者さんが以前よりも増えており、また高齢化が示されています。
・原因は?
血液検査で抗核抗体とよばれる自分への抗体が陽性となること、副腎皮質ステロイドによる治療によく反応することなどから、免疫異常が関係していると考えられています。ウイルス感染や薬剤服用、妊娠・出産後に発症することもあり、これらが引き金になる可能性があります。
・症状は?
通常は症状がなく、健診などで偶然発見されることが多いです。 疲労感、食欲不振などの症状がでることもありますが、自己免疫性肝炎に特徴的な症状はありません。病気が進行して肝硬変になった状態では、黄疸や体のむくみ、腹水による腹部の張りなどの症状がおきることがあります。
・検査診断は?
まずアルコール性肝炎やウイルス性肝炎など他の病気を除外します。次に血液検査で抗核抗体や抗平滑筋抗体などの自己抗体をチェックします。あとは免疫グロブリンと呼ばれる抗体もチェックします。要は自分に対する免疫が活性しているかを調べます。それらが陽性ならかなり疑わしいです。分かりにくい場合には肝臓に針を刺して組織を取ってくる肝生検を行って調べることもあります。
・治療法
まずウルソを内服します。軽症の場合はこれだけで改善することがよくあります。
効果不十分の場合次にステロイドを使います。体格にもよりますがプレドニンを30~40mgをしばらく服用します。これによって肝機能検査値は改善しますので、プレドニンの量を5~10mgまでゆっくり減らします。
当初から、あるいはステロイドの減量中に、アザチオプリンという免疫を抑える薬を一緒に服用する場合もあります。これによってステロイドの減量を早めたり、中止したりできる場合があります。
ただ、ステロイドや免疫を抑える薬を両方とも完全に中止すると、多くの場合自己免疫性肝炎が再発してしまいます。肝機能検査値が再び悪化してしまうため、数値が安定する最低量のプレドニゾロンないしアザチオプリンを維持量として、長期間内服する必要があります。両方を併用する場合もあります。
・薬の副作用
ステロイド内服中は、消化性潰瘍、満月様顔貌、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、不眠、メンタル障害、血栓などの副作用が出現することがあります。量が減るとその分副作用も減るので可能な限り減らします。
アザチオプリンは比較的副作用の少ない薬ですが、それでも血液の中の白血球・血小板の数が急激に減ってしまうことがあります。最近は遺伝子検査でアザチオプリンの副作用リスクが検査できるようになりました。
・経過は?
発症はとてもゆっくりであり、自覚症状も軽い場合が多いため、自分で発症に気がつくことは少なく、健康診断などで偶然に発見されることがほとんどです。しかし、治療を行わないとその進行は早く、肝硬変から肝不全に至ることも稀ではありません。
適切な治療をすれば肝臓の炎症が速やかに改善し、進行もみられなくなります。肝機能検査値が安定している自己免疫性肝炎患者さんの長期経過は良好です。ただ、頻回に悪化する人も存在し、肝不全や肝細胞癌を発症する場合もあります。
・まとめ
自己免疫性肝炎は自覚症状がないため気付きにくい病気です。健診などで肝臓の数値が引っかかった場合には必ず精密検査を受けるようにしてください。きちんと治療すれば怖い病気ではありません。ステロイドや免疫抑制剤を使うことが多いので、結核、非結核性抗酸菌症、B型肝炎は要チェックですよ!あとは女性なら骨粗鬆症もですね。自己免疫性肝炎の治療をして骨折してしまっては悲しすぎますからね。よろしくお願いします!
愛知県名古屋市中村区本陣通2-19
内科・内視鏡内科・糖尿病内科・整形外科
ヴェルヴァーレ本陣クリニック
院長 荻野仁志